翻訳・通訳のトビラへの寄稿記事(第5回)
これまでにご紹介した「新田のマクロ(その壱~その参)」はいかがでしたか?、「品質を高めるための作業」、「翻訳における当たり前の作業」、「感覚的なうれしさを得るための作業」の例とともに、いくつかのWordマクロご体験いただきました。
Wordマクロが翻訳に使えそうだ、と少し感じていただいたところで、今回は翻訳に本格的に活用できるマクロを紹介いたします。みなさまのお役に立ちそうであれば、ぜひお試しください。
第2回目の記事で紹介した「新田のマクロ(その壱)」にあるWeb検索用のWordマクロを、さらに便利にしたものが、「右クリックでGoogle!」(フリーウェア)です。インターネット上の辞書サイトや専門サイトをGoogleで串刺し検索(複数のサイトで同時に検索)できます。さらに、Google検索以外にもよく使うサイトの検索機能を組み込むことも可能です。
翻訳時には、言葉の意味を調べるだけではなく、用法やコロケーションの確認作業にもインターネットを活用できます。Google検索を翻訳に活用する方法については、安藤進さんや遠田和子さんが書籍で詳細に説明されていますから、それらをご一読ください。
Googleのフレーズ検索やワイルドカード検索を活用することから始まり、コマンドを追加して、特定のサイト内の検索に限定したり、特定のサイトを除外したり、画像検索をしたり様々な検索が可能です。効果的に信頼性の高い情報にたどり着くためのコツがあるのです。
私は、学んだコツを忘れずに日々の翻訳作業で使うために「右クリックでGoogle!」を作りました。このマクロを公開後、翻訳者のユーザーのみなさまから使い方をご提案いただいたり、便利なオンライン辞書サイトを教えていただいたりして改良を加えてきました。
みなさんもぜひご活用ください。
さて、第2回目の記事でご紹介した「新田のマクロ(その壱)」には、マーキングのマクロもありました。マーキングも私にとっては非常に重要な翻訳ツールの一つです。
翻訳前には、キーワードが原文中のどこに記載されているのかを把握をして、読解の補助にしています。特許翻訳では、キーワードが書かれる部分が決まっていますし、それ以外のキーワードを探すことも比較的容易です。また、特定のキーワードの周辺に重要な記載が書かれることも多いです。このようにキーワードを取得してこのキーワードを元に蛍光ペンや囲み線でマーキングすれば、文書の内容を「視覚的に」把握することができます。
もともと、私は印刷した原稿に蛍光ペンで着色をして、内容理解の補助としていました。それを自動化したのが、「蛍光と対策」(シェアウェア)と「頻度のヒント」(シェアウェア)です。
「蛍光と対策」は、ユーザー定義ファイルに記載されたキーワードを一括でマーキングをしたり、コメントを入れたりできるマクロです。翻訳文作成前の内容把握以外にも、翻訳文を作成した後のNGワードのチェックにも利用しています。「頻度のヒント」は、逆にマーキングした語句を取り出せます。取り出した語句や、文書中で使われている単語の語数を数えることもできますので、使用頻度に基づいてキーワードを特定することができるのです。
これらのソフトは進化して、後に翻訳チェックソフト「色deチェック」(シェアウェア)となりました。 「色deチェック」は、原文と訳文ファイルから対訳表を自動作成し、原文と訳文の違いを細かくチェックします。今まで目で確認していたことをすべて自動化するため、翻訳者は内容のチェックにもっと時間を割けるのです。
このようにマクロを組み合わせることで、Wordは様々な機能を持った翻訳支援マシンになるのです。さらに、翻訳文の作成作業の前工程や後工程をWordで実施するだけではなく、私は上書き翻訳という手法にて翻訳文の作成作業そのものをWordで実施しています。
今まで紹介した細かなマクロは、Wordでの上書き翻訳に必要なため開発しました。Wordで翻訳をしているからこそ、Word画面からWeb検索を自動で行いたいと思います。「新田のマクロ(その弐)」のようにテキスト形式で貼り付けたり、「新田のマクロ(その参)」のように画面の表示モードを自動で切り替えたりすることは、毎日繰り返される「2秒の作業」なのです。
Wordを上書き翻訳マシンにするためのマクロとして、用語を一括置換する専用ソフトである「ぱらぱら」(シェアウェア)と検索語と置換語を自動で保存する「山猫の手」(シェアウェア)を提供しています。Wordを徹底的に翻訳マシンとして使い倒したい方、ぜひ一緒にソフトウェアを育てていただけいるとうれしいです。
私はユーザーのみなさまの近くでソフトウェア開発をできることが非常に楽しいと思っています。それぞれの方がニーズ・目的に合わせて、私のマクロを工夫して使われています。そのような利用状況について報告いただいた場合には、許可をいただいた上で、その工夫を誰でも使えるように公開済みのマクロに組み込んだり、新たなマクロとして公開したりしています。
また、上書き翻訳用の支援マクロは、プログラム文をブログで公開しています。Wordのチューニングには、翻訳者ご自身がプログラム文を少しでも自分の好みに変更して使うことが大切だと思っているからです。
これからも、みなさんとともにマクロの開発を進めていきたいと思っています。次回は最終回ですが、プログラミングについてご紹介したいと思います。翻訳者として(片手間で)プログラミングをするうれしさをお伝えしたいと思います。
翻訳に活用できる 「本格派」マクロをご紹介!
~目次~
第1回 Wordマクロって何?
第2回 マクロに切替えるポイント
第3回 気づいた瞬間に目がキラリ!
第4回 心地よい作業空間
第5回 翻訳に活用できる 「本格派」マクロをご紹介!
第6回 マクロは続くよ、どこまでも!
~関連ブログ記事~
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Wordマクロが翻訳に使えそうだ、と少し感じていただいたところで、今回は翻訳に本格的に活用できるマクロを紹介いたします。みなさまのお役に立ちそうであれば、ぜひお試しください。
第2回目の記事で紹介した「新田のマクロ(その壱)」にあるWeb検索用のWordマクロを、さらに便利にしたものが、「右クリックでGoogle!」(フリーウェア)です。インターネット上の辞書サイトや専門サイトをGoogleで串刺し検索(複数のサイトで同時に検索)できます。さらに、Google検索以外にもよく使うサイトの検索機能を組み込むことも可能です。
翻訳時には、言葉の意味を調べるだけではなく、用法やコロケーションの確認作業にもインターネットを活用できます。Google検索を翻訳に活用する方法については、安藤進さんや遠田和子さんが書籍で詳細に説明されていますから、それらをご一読ください。
Googleのフレーズ検索やワイルドカード検索を活用することから始まり、コマンドを追加して、特定のサイト内の検索に限定したり、特定のサイトを除外したり、画像検索をしたり様々な検索が可能です。効果的に信頼性の高い情報にたどり着くためのコツがあるのです。
私は、学んだコツを忘れずに日々の翻訳作業で使うために「右クリックでGoogle!」を作りました。このマクロを公開後、翻訳者のユーザーのみなさまから使い方をご提案いただいたり、便利なオンライン辞書サイトを教えていただいたりして改良を加えてきました。
みなさんもぜひご活用ください。
さて、第2回目の記事でご紹介した「新田のマクロ(その壱)」には、マーキングのマクロもありました。マーキングも私にとっては非常に重要な翻訳ツールの一つです。
翻訳前には、キーワードが原文中のどこに記載されているのかを把握をして、読解の補助にしています。特許翻訳では、キーワードが書かれる部分が決まっていますし、それ以外のキーワードを探すことも比較的容易です。また、特定のキーワードの周辺に重要な記載が書かれることも多いです。このようにキーワードを取得してこのキーワードを元に蛍光ペンや囲み線でマーキングすれば、文書の内容を「視覚的に」把握することができます。
もともと、私は印刷した原稿に蛍光ペンで着色をして、内容理解の補助としていました。それを自動化したのが、「蛍光と対策」(シェアウェア)と「頻度のヒント」(シェアウェア)です。
「蛍光と対策」は、ユーザー定義ファイルに記載されたキーワードを一括でマーキングをしたり、コメントを入れたりできるマクロです。翻訳文作成前の内容把握以外にも、翻訳文を作成した後のNGワードのチェックにも利用しています。「頻度のヒント」は、逆にマーキングした語句を取り出せます。取り出した語句や、文書中で使われている単語の語数を数えることもできますので、使用頻度に基づいてキーワードを特定することができるのです。
これらのソフトは進化して、後に翻訳チェックソフト「色deチェック」(シェアウェア)となりました。 「色deチェック」は、原文と訳文ファイルから対訳表を自動作成し、原文と訳文の違いを細かくチェックします。今まで目で確認していたことをすべて自動化するため、翻訳者は内容のチェックにもっと時間を割けるのです。
このようにマクロを組み合わせることで、Wordは様々な機能を持った翻訳支援マシンになるのです。さらに、翻訳文の作成作業の前工程や後工程をWordで実施するだけではなく、私は上書き翻訳という手法にて翻訳文の作成作業そのものをWordで実施しています。
今まで紹介した細かなマクロは、Wordでの上書き翻訳に必要なため開発しました。Wordで翻訳をしているからこそ、Word画面からWeb検索を自動で行いたいと思います。「新田のマクロ(その弐)」のようにテキスト形式で貼り付けたり、「新田のマクロ(その参)」のように画面の表示モードを自動で切り替えたりすることは、毎日繰り返される「2秒の作業」なのです。
Wordを上書き翻訳マシンにするためのマクロとして、用語を一括置換する専用ソフトである「ぱらぱら」(シェアウェア)と検索語と置換語を自動で保存する「山猫の手」(シェアウェア)を提供しています。Wordを徹底的に翻訳マシンとして使い倒したい方、ぜひ一緒にソフトウェアを育てていただけいるとうれしいです。
私はユーザーのみなさまの近くでソフトウェア開発をできることが非常に楽しいと思っています。それぞれの方がニーズ・目的に合わせて、私のマクロを工夫して使われています。そのような利用状況について報告いただいた場合には、許可をいただいた上で、その工夫を誰でも使えるように公開済みのマクロに組み込んだり、新たなマクロとして公開したりしています。
また、上書き翻訳用の支援マクロは、プログラム文をブログで公開しています。Wordのチューニングには、翻訳者ご自身がプログラム文を少しでも自分の好みに変更して使うことが大切だと思っているからです。
これからも、みなさんとともにマクロの開発を進めていきたいと思っています。次回は最終回ですが、プログラミングについてご紹介したいと思います。翻訳者として(片手間で)プログラミングをするうれしさをお伝えしたいと思います。
翻訳に活用できる 「本格派」マクロをご紹介!
~目次~
第1回 Wordマクロって何?
第2回 マクロに切替えるポイント
第3回 気づいた瞬間に目がキラリ!
第4回 心地よい作業空間
第5回 翻訳に活用できる 「本格派」マクロをご紹介!
第6回 マクロは続くよ、どこまでも!
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