翻訳・通訳のトビラへの寄稿記事(第3回)
前の記事に引き続いて、Wordマクロを使う切り口とそれに対応したマクロをご紹介します。今回の切り口は、「翻訳における当たり前の作業にこそ、2秒のマクロを!」です。
前回は、ある意味で「そこまでしなくてもいい」作業を自動化するマクロでした。品質を高めるためのプラスアルファの作業を支援するマクロです。今回は、「必ずしなければならない作業」に対するマクロを紹介します。
翻訳で何気なくしている作業には、自動化が可能な部分がかなりあります。例えば、ウェブサイトや他の文書からコピーした文字や文章を貼付けることがありますよね。そのときに、不要な書式(フォントの種類、サイズ、色、リンクなど)が一緒に貼付けられてしまい、設定し直すのに一手間かかってしまうことありませんか?
または、このようにならないように、まずメモ帳に貼付けて書式情報を解除してから、そのテキストだけをコピーして貼付けている方もいらっしゃるでしょう。
実は、Wordには、「テキスト形式で貼付ける」という機能がもともと備わっています。この機能を実行すれば、書式情報のないテキストだけを貼付けることができるのです。しかし、その機能が数クリックしてたどり着く場所に隠れているため(つまり、ボタンとして表示されていないために)、ご存知ではない方も多いのではないでしょうか。このようなWordの機能をマクロで実行することは簡単です。
貼付けに関する他の例として、先頭の1文字が大文字で書かれた英単語(例えば、二酸化炭素:Carbon dioxide)をオンライン辞書や電子辞書からコピーして翻訳文に貼付けることもよくありますね。このようなときには、単語を貼付けた後にカーソルを単語の先頭に移動させて、1文字目のCを削除してから小文字のcを入力していませんか?
上記のような、私たち翻訳者の日常のちょっとしたイライラもマクロで解消できます。すでに当たり前なものとして受け入れてしまいイライラを感じていない方もいらっしゃると思います。あきらめてしまっていること自体を自覚していない状態なんですね。
「今までの当たり前」をもう一度見直してみると、自動化できる2秒はたくさん出てきます。私のWordマクロセミナーの受講生の目の色が変わるのは、ここに気づいた瞬間です。私がWordマクロをお伝えする上で、最もうれしい瞬間ですね。中には「日常業務」に思いを巡らし始め、セミナー内容は上の空(遠い目)になる方もいらっしゃいます(笑)。
別の例をご紹介しましょう。原稿中の余分な改行記号(例えば、文の途中の改行記号)を削除する作業が時々発生しますね。PDF文書やウェブサイトからWord文書を作るときに、不要な改行記号が入ることがあります。
例えば、私の場合、この不要な改行記号を削除する作業で、2つのマクロを組み合わせています。「①改行記号を検索するマクロ」と「②検索された改行記号を削除して次の改行記号を検索するマクロ」です。つまり、完全に自動化したマクロではないのです。私は、マクロが検索した「改行記号」の要否を判断します。この検索した改行記号が不要な場合、上記の②のマクロを使って改行記号を削除してから次の改行記号を探します。改行記号が正しい場合には、削除せずに①のマクロで次の改行記号を探します。
必要・不要の判断はほぼ一瞬でできますから、どんどん削除できるはずです。今まで、カーソルを矢印キーで移動したり、マウスで改行記号を選択したりしていた作業が、どれだけ神経と労力を使っていたのか「発見」できると思います。このレベルのちょっとした自動化を取り入れ始めると、少しずつ業務効率があがると思います。
さらに、今回のこの記事で紹介したマクロ「新田のマクロ(その弐)」は、キーボードに割り当てて(登録して)、そのショートカットキーとして実行していただきたいですね。ショートカットキーというのは、特定の機能やマクロを簡単なキー操作で実行する機能です。よく知られたものに、[Ctrl] + [C]がありますね。これは「コピー」の機能に対応するショートカットキーです。そして、「貼付け」の機能に対応するのが、[Ctrl] + [V]ですね。
私は、セミナーでは1時間以上かけて、キーボードへの割り当て方法や割り当てるときのコツを説明しています。これが、マクロを楽しさや、Wordを自分の作業空間として「チューニングする」おもしろさに気づいていたける大切なポイントだからです。
少しイメージしてみてください。[Alt] + [A]と押したら、選択されている文字列が「英辞郎 on the WEB」で検索されて、[Alt] + [G]で、Googleでフレーズ検索されたらどうですか?さらに、[Alt] + [T]でテキスト形式で貼付けられて、[Alt] + [V]で、1文字目を小文字にして貼付けられたとしたら?
マウスに持ち替えてボタンをクリックすることなくマクロを実行できるのです!これが2秒を自動化する具体的な姿なのです。
このショートカットキーの登録は慣れると簡単です。上記の操作例だけでなく、みなさんに一番しっくりするキー操作を試していただきたいですね。「何種類かのキー操作を試してみる」という試行錯誤は、実益性が高く、かつ創造的で知的な作業です。この作業自体も楽しんでみてください。具体的な方法については、ダウンロードしたフォルダ内のマニュアルをご覧ください。
マクロを使う楽しさは始まったばかりです。第2回の記事で紹介いたしましたオンライン辞書検索用のマクロもキーボードから実行できますよ。ぜひご体験ください。
(配付マクロ)
・テキスト形式にて貼付け
・先頭の1文字を小文字にして貼付け
・改行記号を検索
・改行記号を削除して次の改行記号を検索
翻訳・通訳のトビラ 第3回「マクロに切替えるポイント」
「新田のマクロ(その弐)」のダウンロード (無料アドインのダウンロード)
キーボードへの割り当て方法(動画解説)
~目次~
第1回 Wordマクロって何?
第2回 マクロに切替えるポイント
第3回 気づいた瞬間に目がキラリ!
第4回 心地よい作業空間
第5回 翻訳に活用できる 「本格派」マクロをご紹介!
第6回 マクロは続くよ、どこまでも!
~関連ブログ記事~
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前回は、ある意味で「そこまでしなくてもいい」作業を自動化するマクロでした。品質を高めるためのプラスアルファの作業を支援するマクロです。今回は、「必ずしなければならない作業」に対するマクロを紹介します。
翻訳で何気なくしている作業には、自動化が可能な部分がかなりあります。例えば、ウェブサイトや他の文書からコピーした文字や文章を貼付けることがありますよね。そのときに、不要な書式(フォントの種類、サイズ、色、リンクなど)が一緒に貼付けられてしまい、設定し直すのに一手間かかってしまうことありませんか?
または、このようにならないように、まずメモ帳に貼付けて書式情報を解除してから、そのテキストだけをコピーして貼付けている方もいらっしゃるでしょう。
実は、Wordには、「テキスト形式で貼付ける」という機能がもともと備わっています。この機能を実行すれば、書式情報のないテキストだけを貼付けることができるのです。しかし、その機能が数クリックしてたどり着く場所に隠れているため(つまり、ボタンとして表示されていないために)、ご存知ではない方も多いのではないでしょうか。このようなWordの機能をマクロで実行することは簡単です。
貼付けに関する他の例として、先頭の1文字が大文字で書かれた英単語(例えば、二酸化炭素:Carbon dioxide)をオンライン辞書や電子辞書からコピーして翻訳文に貼付けることもよくありますね。このようなときには、単語を貼付けた後にカーソルを単語の先頭に移動させて、1文字目のCを削除してから小文字のcを入力していませんか?
上記のような、私たち翻訳者の日常のちょっとしたイライラもマクロで解消できます。すでに当たり前なものとして受け入れてしまいイライラを感じていない方もいらっしゃると思います。あきらめてしまっていること自体を自覚していない状態なんですね。
「今までの当たり前」をもう一度見直してみると、自動化できる2秒はたくさん出てきます。私のWordマクロセミナーの受講生の目の色が変わるのは、ここに気づいた瞬間です。私がWordマクロをお伝えする上で、最もうれしい瞬間ですね。中には「日常業務」に思いを巡らし始め、セミナー内容は上の空(遠い目)になる方もいらっしゃいます(笑)。
別の例をご紹介しましょう。原稿中の余分な改行記号(例えば、文の途中の改行記号)を削除する作業が時々発生しますね。PDF文書やウェブサイトからWord文書を作るときに、不要な改行記号が入ることがあります。
例えば、私の場合、この不要な改行記号を削除する作業で、2つのマクロを組み合わせています。「①改行記号を検索するマクロ」と「②検索された改行記号を削除して次の改行記号を検索するマクロ」です。つまり、完全に自動化したマクロではないのです。私は、マクロが検索した「改行記号」の要否を判断します。この検索した改行記号が不要な場合、上記の②のマクロを使って改行記号を削除してから次の改行記号を探します。改行記号が正しい場合には、削除せずに①のマクロで次の改行記号を探します。
必要・不要の判断はほぼ一瞬でできますから、どんどん削除できるはずです。今まで、カーソルを矢印キーで移動したり、マウスで改行記号を選択したりしていた作業が、どれだけ神経と労力を使っていたのか「発見」できると思います。このレベルのちょっとした自動化を取り入れ始めると、少しずつ業務効率があがると思います。
さらに、今回のこの記事で紹介したマクロ「新田のマクロ(その弐)」は、キーボードに割り当てて(登録して)、そのショートカットキーとして実行していただきたいですね。ショートカットキーというのは、特定の機能やマクロを簡単なキー操作で実行する機能です。よく知られたものに、[Ctrl] + [C]がありますね。これは「コピー」の機能に対応するショートカットキーです。そして、「貼付け」の機能に対応するのが、[Ctrl] + [V]ですね。
私は、セミナーでは1時間以上かけて、キーボードへの割り当て方法や割り当てるときのコツを説明しています。これが、マクロを楽しさや、Wordを自分の作業空間として「チューニングする」おもしろさに気づいていたける大切なポイントだからです。
少しイメージしてみてください。[Alt] + [A]と押したら、選択されている文字列が「英辞郎 on the WEB」で検索されて、[Alt] + [G]で、Googleでフレーズ検索されたらどうですか?さらに、[Alt] + [T]でテキスト形式で貼付けられて、[Alt] + [V]で、1文字目を小文字にして貼付けられたとしたら?
マウスに持ち替えてボタンをクリックすることなくマクロを実行できるのです!これが2秒を自動化する具体的な姿なのです。
このショートカットキーの登録は慣れると簡単です。上記の操作例だけでなく、みなさんに一番しっくりするキー操作を試していただきたいですね。「何種類かのキー操作を試してみる」という試行錯誤は、実益性が高く、かつ創造的で知的な作業です。この作業自体も楽しんでみてください。具体的な方法については、ダウンロードしたフォルダ内のマニュアルをご覧ください。
マクロを使う楽しさは始まったばかりです。第2回の記事で紹介いたしましたオンライン辞書検索用のマクロもキーボードから実行できますよ。ぜひご体験ください。
(配付マクロ)
・テキスト形式にて貼付け
・先頭の1文字を小文字にして貼付け
・改行記号を検索
・改行記号を削除して次の改行記号を検索
翻訳・通訳のトビラ 第3回「マクロに切替えるポイント」
「新田のマクロ(その弐)」のダウンロード (無料アドインのダウンロード)
キーボードへの割り当て方法(動画解説)
~目次~
第1回 Wordマクロって何?
第2回 マクロに切替えるポイント
第3回 気づいた瞬間に目がキラリ!
第4回 心地よい作業空間
第5回 翻訳に活用できる 「本格派」マクロをご紹介!
第6回 マクロは続くよ、どこまでも!
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