翻訳・通訳のトビラへの寄稿記事(第1回)
このたび、翻訳でのWordマクロのうれしい活用方法をご紹介させていただくことになりました新田順也と申します。私は、現在、技術翻訳、Word用ソフトウェア開発、Wordマクロセミナー講師、Wordマクロを用いた業務改善コンサルティングの仕事をさせていただいております。昨年(2011年)の10月に、マイクロソフト社からWordのMVPを受賞いたしました。世界で22名いるWord MVPの1人として、Wordユーザーの声をアメリカ本社の開発者に届ける役割もいただいております。
Wordマクロとは、みなさんもご存知のワープロソフト「Word」の機能の一つです。Wordマクロを用いると、Wordの特定の機能を自動で実行することや、複数の機能を連続して実行させることができます。例えば、Wordマクロにより、特定のファイルを開き、特定のプリンターで印刷をし、そのファイルを閉じる、という一連の作業を一気に実行することが可能です。このように、通常は手作業でしていることを自動化することができるのです。そのほかにも、もう少し手間のかかる作業も一瞬で行うことができます。例えば、本文中の半角数字だけすべて全角に変換することや、文書中に挿入されたコメントを、記載されたページ番号とともに別紙に書き出すこともワンクリックでできます。
では、Wordマクロを翻訳に使うとはどういうことなのでしょうか。最初に重要なことを申し上げます。Wordマクロは翻訳をしません。翻訳をするのは、あくまでも私たち翻訳者です。Wordマクロは、私たちの翻訳作業を要所要所で支援する道具であるとご理解ください。
「Wordマクロが翻訳をする」と期待されている方が私のマクロを使うと、多くの場合がっかりすると思います。例えば、私が公開しているマクロは、特定のキーワードに蛍光ペンでマーキングをしたり、特定の文字列の使用頻度を数えたり。ただ、マーキングするだけですし、使用頻度を数えるだけです。カーソルを移動させるだけのマクロもあります。画面を1行分上下させるマクロもあります。これは翻訳ではありませんね。
では、私たち翻訳者はWordマクロの何に期待できるのでしょうか。
私は「2秒×1000回=30分」というコンセプトで翻訳用のWordマクロをブログなどでご紹介しています。これは、1日の仕事の中には、30分程度の「自動化可能な」業務が含まれており、この業務でWordマクロを使ってみましょう!という提案です。1回2秒で行っている作業が1日で1000回程度発生しています。1000回というとかなり多く感じられますが、1分間に2回だけだとしても、8時間で960回発生することになるのです。この2秒の作業をマクロで自動化することができれば、1日のうち30分の作業が自動化できるかもしれないのです。
そして、ここで生み出した時間を私たち人間がすべき重要な作業に使いたいですね。原文をしっかり読む時間に充てるのも大切ですし、適度な休憩を入れることも大切だと思います。
私は、通常の4クリック程度の繰り返し作業(マウスに持ち替えて実行すると2秒)をマクロにして、キーボードからのショートカットで実行することを提案しています。作業内容は、次回以降ご紹介しますが、繰り返し行う小さな作業です。
このように、私が意図しているWordマクロは、「3時間分の仕事を5分に短縮する」たぐいのExcelのマクロとは大きく異なります。Excelマクロは、データを社内の複数部門から集めてきて、それらを一気に処理をするような場合(1週に1回、月に1回)が多いと思われます。つまり、組織のために時々使うマクロであることが多いのではないでしょうか。私が提案するWordマクロは、今この瞬間に私たち翻訳者が自分のために使うものです。私は、翻訳中はカーソル移動やネット検索を中心にマクロを多用していますので、一日に数千回マクロを実行しています。
私は、Wordマクロは、それぞれの翻訳者の方々の翻訳の手法を自分流にさらに磨きあげていく非常に優れた支援ツールだと思っています。私は、このWordを磨く作業を「Wordをチューニングする」と表現しています。私たちの翻訳スタイルに合わせてWordをチューニングをしていけば、Wordはそれに応じて変化してくれます。その結果、単なるワープロソフトだったWordが、自分だけの翻訳作業空間になるのです。そんな楽しみもついてきます。
この「Wordのチューニング」という創造的で個人的な体験をみなさまと分かち合い、みなさまと意見交換をさせていただくことで私自身も成長させていただきたいと思っています。私は、「作業の目的に合わせてWordマクロを使う」ことが大切だと思っています。みなさまの翻訳手法にあったWordマクロの使い方のヒントを提案できればうれしく思います。
次回、「2秒×1000回=30分」というコンセプトのマクロを、簡単なインストール作業だけで使えるようになるアドイン形式で提供させていただきます。実際に使っていただいてマクロでWordをチューニングする楽しさをご体験いただきたく思います。そして、Wordマクロに任せる作業、Wordマクロをキーボードから実行する割付け例、私が公開しているフリーウェア、シェアウェアの具体的な使用例などを順次紹介させていただきたいと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
翻訳・通訳のトビラ 連載開始します!
~目次~
第1回 Wordマクロって何?
第2回 マクロに切替えるポイント
第3回 気づいた瞬間に目がキラリ!
第4回 心地よい作業空間
第5回 翻訳に活用できる 「本格派」マクロをご紹介!
第6回 マクロは続くよ、どこまでも!
~関連ブログ記事~
翻訳・通訳のトビラ フォロー記事一覧
Wordマクロとは、みなさんもご存知のワープロソフト「Word」の機能の一つです。Wordマクロを用いると、Wordの特定の機能を自動で実行することや、複数の機能を連続して実行させることができます。例えば、Wordマクロにより、特定のファイルを開き、特定のプリンターで印刷をし、そのファイルを閉じる、という一連の作業を一気に実行することが可能です。このように、通常は手作業でしていることを自動化することができるのです。そのほかにも、もう少し手間のかかる作業も一瞬で行うことができます。例えば、本文中の半角数字だけすべて全角に変換することや、文書中に挿入されたコメントを、記載されたページ番号とともに別紙に書き出すこともワンクリックでできます。
では、Wordマクロを翻訳に使うとはどういうことなのでしょうか。最初に重要なことを申し上げます。Wordマクロは翻訳をしません。翻訳をするのは、あくまでも私たち翻訳者です。Wordマクロは、私たちの翻訳作業を要所要所で支援する道具であるとご理解ください。
「Wordマクロが翻訳をする」と期待されている方が私のマクロを使うと、多くの場合がっかりすると思います。例えば、私が公開しているマクロは、特定のキーワードに蛍光ペンでマーキングをしたり、特定の文字列の使用頻度を数えたり。ただ、マーキングするだけですし、使用頻度を数えるだけです。カーソルを移動させるだけのマクロもあります。画面を1行分上下させるマクロもあります。これは翻訳ではありませんね。
では、私たち翻訳者はWordマクロの何に期待できるのでしょうか。
私は「2秒×1000回=30分」というコンセプトで翻訳用のWordマクロをブログなどでご紹介しています。これは、1日の仕事の中には、30分程度の「自動化可能な」業務が含まれており、この業務でWordマクロを使ってみましょう!という提案です。1回2秒で行っている作業が1日で1000回程度発生しています。1000回というとかなり多く感じられますが、1分間に2回だけだとしても、8時間で960回発生することになるのです。この2秒の作業をマクロで自動化することができれば、1日のうち30分の作業が自動化できるかもしれないのです。
そして、ここで生み出した時間を私たち人間がすべき重要な作業に使いたいですね。原文をしっかり読む時間に充てるのも大切ですし、適度な休憩を入れることも大切だと思います。
私は、通常の4クリック程度の繰り返し作業(マウスに持ち替えて実行すると2秒)をマクロにして、キーボードからのショートカットで実行することを提案しています。作業内容は、次回以降ご紹介しますが、繰り返し行う小さな作業です。
このように、私が意図しているWordマクロは、「3時間分の仕事を5分に短縮する」たぐいのExcelのマクロとは大きく異なります。Excelマクロは、データを社内の複数部門から集めてきて、それらを一気に処理をするような場合(1週に1回、月に1回)が多いと思われます。つまり、組織のために時々使うマクロであることが多いのではないでしょうか。私が提案するWordマクロは、今この瞬間に私たち翻訳者が自分のために使うものです。私は、翻訳中はカーソル移動やネット検索を中心にマクロを多用していますので、一日に数千回マクロを実行しています。
私は、Wordマクロは、それぞれの翻訳者の方々の翻訳の手法を自分流にさらに磨きあげていく非常に優れた支援ツールだと思っています。私は、このWordを磨く作業を「Wordをチューニングする」と表現しています。私たちの翻訳スタイルに合わせてWordをチューニングをしていけば、Wordはそれに応じて変化してくれます。その結果、単なるワープロソフトだったWordが、自分だけの翻訳作業空間になるのです。そんな楽しみもついてきます。
この「Wordのチューニング」という創造的で個人的な体験をみなさまと分かち合い、みなさまと意見交換をさせていただくことで私自身も成長させていただきたいと思っています。私は、「作業の目的に合わせてWordマクロを使う」ことが大切だと思っています。みなさまの翻訳手法にあったWordマクロの使い方のヒントを提案できればうれしく思います。
次回、「2秒×1000回=30分」というコンセプトのマクロを、簡単なインストール作業だけで使えるようになるアドイン形式で提供させていただきます。実際に使っていただいてマクロでWordをチューニングする楽しさをご体験いただきたく思います。そして、Wordマクロに任せる作業、Wordマクロをキーボードから実行する割付け例、私が公開しているフリーウェア、シェアウェアの具体的な使用例などを順次紹介させていただきたいと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。
翻訳・通訳のトビラ 連載開始します!
~目次~
第1回 Wordマクロって何?
第2回 マクロに切替えるポイント
第3回 気づいた瞬間に目がキラリ!
第4回 心地よい作業空間
第5回 翻訳に活用できる 「本格派」マクロをご紹介!
第6回 マクロは続くよ、どこまでも!
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